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なが〜く愛されるキャラクターを支えるクリエイティブの秘密!

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?今回は、サンリオのクリエイティブについて知っていただきたくキャラクター育成について聞きました。半世紀以上をかけて歴代450を超えるキャラクターを生み出してきたサンリオ。クリエイションデザインへの想いや、長く愛され続けるためにどのようにキャラクターを育てているのかデザイン部門のトップインタビューでお届けします。

Profile:山田周平/1999年に株式会社サンリオに入社。入社後はデザイン部に配属となり、2022年からはキャラクターのクリエイション全般を担当する。趣味は登山とキャンプ。

サンリオのクリエイションってどんな仕事?

 -サンリオには新卒で入社したんですよね。

山田:入社して約20年間、主に他社にサンリオのキャラクターを活用していただくデザイン業務に携わりました。今年からは、キャラクターのクリエイション全般を担当することになりました。キャラクターデザインの運用ルール作りや、新たに開発するデザインの方向性を検討したり、新しい技術にどう対応するかも考えています。また、デザイナーたちが働きやすい職場環境を整えたりもしています。

 -デザインに関する事はなんでもやるという感じなんですね。デザイナーのみなさんは、どんな仕事をしているんですか?

山田:新しいキャラクターを開発するだけでなく、商品化のデザイン、キャラクターブランディングに関わるデザインなどをしています。他社にキャラクターを活用していただくライセンスビジネスでは、お取引先に提供するベースになるデザインを提供する業務と、逆にお取引先が制作されたデザインを監修する業務があります。

-すごく幅広いデザインのお仕事があるんですね。

山田:100名ほどのデザイナーが在籍していて、キャラクター制作、ライセンス担当、広告系デザイン、グッズデザイン、店舗などの空間デザインなどに携わっています。
外部のデザインパートナーや、お取引先や海外子会社のデザイナー、そして社内の様々な人と一緒にアイデアを出したり、語り合いながら総合力でキャラクターを育てています。

-クリエイティブについてサンリオが大切にしていることは何ですか?

山田:デザイナー本人が作りたいデザインを作るのではなく、「ファンのみなさまやお取引先が求めているデザイン」を作る事を大切にしています。デザイナーひとりでは情報を集めることに限界があります。そこで、営業はお取引先のニーズを、デジタルサイエンスのメンバーは定量データを、サンリオショップのスタッフは店頭でお客様の声を、マーケッターはTwitterなどで広く一般のみなさんの反応を、と言った感じで、さまざまな「声」を集めてくれます。それらの情報や声に支えられながら、デザインを試行錯誤することが良い結果に繋がっていると感じています。

-まさに企業理念でもある「みんななかよく」で、色々なものをクリエイションしているんですね。

山田:そうなんです!まさに「みんななかよく」作るのはとっても大事なことなんですよね。

ルールだからダメなんじゃない!

-サンリオはキャラクターを扱うので、ルールが厳しそうなイメージがあります。

山田:実務上は、ブランディングの決めごとや法律的なルールなど制約はありますが、ニーズのあるデザインに対して、ルールだからダメというのは一番やってはいけないと考えています。本来守らないといけないのは中身のコアな部分。すなわちキャラクターたちの世界観なんです。
だから、ルールだからダメなのでなく、なぜできたのか、その背景を大切にする文化が自然とあるんですよ。私が入社した頃には、その文化はできあがっていました。この社内文化が、「サンリオっぽい」と言っていただくクリエイションを支えてきたのかもしれませんね。

-色々なルールがある中でクリエイションするのは、すごく難しそうですね。

山田:決められた条件の中でクオリティの高いものを作ることを追求しているのが私たちの日常です。すごく楽しいですし、やりがいもありますよ。サンリオのデザイナーは制約のない世界で表現するアーティストではありません。「なんでも自由に作っていいよ」と言われた方が戸惑ってしまうかもしれません(笑)。

キャラクターが長く愛される秘密!

-2022年は「シナモロール」がデビュー20周年ですね。「ハローキティ」、「マイメロディ」、「リトルツインスターズ」がデビューしたのは70年代中頃です。キャラクターが長く愛され続けているのはなぜですか?

山田:どれだけ多くの人に寄り添えるのかということではないでしょうか。私たちは「ファンのみなさまや顧客が求めるデザイン」=「寄り添うデザイン」にこだわり続けてきました。長く愛されるキャラクターは多くの人たちに寄り添う為にキャラクター自体が成長していくんです。

「ハローキティ」初の商品 プチパース(1975年発売)

山田:例えば「ハローキティ」は、最初は横すわりのポーズだけでした。それが正面を向いたポーズや、アウトライン(周囲の線)を取ったバージョンなど様々なバリエーションとともに成長し続けてきました。先ほどのルールの話にもつながるのですが、世界観を広げるためにルールから外れるのを恐れず挑戦し続けた結果、今も愛されているのかなと思います。

-なるほど!世界観を壊さないようにルールを少しずつ広げていっているんですね。

山田:他にも面白いケースとしては、2005年に「おねがいマイメロディ」というTVアニメの中で「クロミ」という、"自称"マイメロディのライバルというキャラクターが生まれました。

「クロミ」と「マイメロディ」も取材を見守ってくれました。

山田:当時は「きもかわいい」に代表されるように、「かわいい」の幅が広がりつつありました。時代に寄り添う、ツンデレな性格のキャラクター「クロミ」が生まれたことで、「マイメロディ」の世界観も広がったのではないかなぁと思います。

-今では「クロミ」は2022年サンリオキャラクター大賞でも3位! すごいですよね。

山田:そうなんですよ! そして実は、現在進行形でクロミの魅力を世界に発信するプロジェクト「#世界クロミ化計画」がはじまっています。

-「#世界クロミ化計画」!?

山田:元々ツンデレでちょっとワガママなキャラクターとして生まれた「クロミ」ですが、それは裏を返すと「自分自身を素直に表現する」事でもありますよね。そんな「クロミ」の個性に共感を覚えたファンと共に「クロミーズ」という組織を作ってワールドワイドでの展開を目論んでいるみたいですよ!

-そう考えると、「クロミ」は多様な自己表現を認め合う現代にフィットしたキャラクターなのかもしれませんね。

山田:デザイン的にも「クロミ」の目やアウトラインの線をピンクにしたり、スマホなどでも綺麗に見えるグラデーションカラーを取り入れたり、たくさんのチャレンジをしてます。こういった試みの裏側にも、膨大なリサーチやマーケティング、ファンのみなさんの声がいきているんですよ。

左が初期デザイン、右が「#世界クロミ化計画」用に作られたデザイン。

ちょっとお休みしているキャラクターの再登場!

-逆に、久しぶりに登場することで話題になるキャラクターもいますよね。そういうキャラクターたちは、どのように復活してくるんですか?

山田:例えば、「ニャニィニュニェニョン」はコラボをきっかけに久しぶりに登場して話題になったり、「はぴだんぶい」のようにユニット化して積極的に打ち出したり、様々なケースがあります。 

「はぴだんぶい」はポチャッコ、タキシードサム、けろけろけろっぴ、バッドばつ丸、ハンギョドン、あひるのペックルからなるユニット。

-「はぴだんぶい」は、懐かしいキャラクターたちがグループとしてデビューした面白いプロジェクトですね。

山田:そもそも「ハッピーになりたい男子たち、V字回復をねらう」を略して「はぴだんぶい」なんです(笑)。さまざまなチャレンジを通して「大丈夫! 君は君のままで、きっとうまくいく」というメッセージを伝え、みんなをちょっとハッピーすることを目指しているんですよ。

-ちょっと面白いグループですね。応援したくなってしまいます(笑)。

山田:それぞれのキャラクターの世界観をまたいだユニットは今だからこそできる挑戦です。これも450を越えるキャラクターを自社で生み出し続けているサンリオだからこそ出来る「復活と刷新」だと思います。

-そういった懐かしいキャラクターを現代風にするのは難しいことですか?

山田:どんなデザインだったっけ? と思い出しつつ、昔の資料を探すところから始めます(笑)。
当時のデザインの雰囲気を残しながらも、性格を少し時代に寄り添うように変化をさせたり、やはりここでもニーズに合わせたクリエイティブを心がけています。 

これから生まれるキャラクターの変化。

-これから生まれるキャラクターは、時代と共にどのように変化するのでしょうか?

山田:時代と共に環境や求められる物は変わっていきますよね。でも、人間の根本的なところは変わらないと思うんです。サンリオのキャラクターは、世間全体のニーズに対応して変化はさせても、「なかよく」や「思いやり」といった、時代が変わっても古くならない芯を持っています。

-では、時代や環境に求められるものはどのように変わってきていると思いますか?

山田:以前は、キャラクターのデビューは、サンリオショップでの商品発売ということが多かったのですが、それが、2013年スマホゲームのキャラクターとしてデビューした「SHOW BY ROCK!!」以降、活躍する媒体の幅が広がりました。

-そうなんですね。

山田:例えば、私も誕生に関わった「こぎみゅん」はすごく代表的で、YouTube、Twitter、Instagram、LINEライブなど、メディアでの活動からスタートしました。チームで試行錯誤しながらサポートし、初めてグッズ化したときの感動は忘れられません。

もちろん、取材にはこぎみゅんも駆けつけてくれました。

-ようやく、触れられた…みたいな(笑)。今までのキャラクターとは誕生する背景が変わったことで、どう思われますか?

山田:すごくいいことだと思うんです! 商品化を前提に生まれると、ある意味では商品化したらゴールなんですよね。でも、SNSをきっかけに生まれたキャラクターだと、日々SNSで発信できるので、ファンのみなさんとの接点も増えますし、ずーっと成長し続けていく。

-確かにそうですね!

山田:ある意味では、すごくピュアに世界観を表現していけると思ってワクワクしています。メディアが増えるほどに、キャラクターがイキイキとできる環境が増えるんです。これからはもっと長く愛されるキャラクターが増えるといいなと思います。

ーファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。

山田:私たちのクリエイションが、みなさんの心が安らぐような瞬間を作れたらいいなって思います。また、私たちクリエイターに関わってくださる、全ての方に感謝しています。ぜひこれからのサンリオのクリエイティブにも注目してくださいね。

わたしのサンリオ時間!

ーSanrioTimesでは、毎回お聞きしているのですが、好きなキャラクターや思い入れのあるキャラクターについて教えてください!

山田:大河ドラマ「花燃ゆ」のキャラクター「もゆるん」なんです。実は自分が制作を担当したキャラクターなんですが、サンリオのデザイナーとして、キャラクターを作ることは夢の一つでもあるので、すごく心に残っています。

2015年大河ドラマ『花燃ゆ』の公式キャラクター・もゆるん

ーでは、最後にサンリオ時間を教えてください!

山田:2歳になる子どもと歯磨きタイムに一緒に「こぎみゅん」の動画を見るのが日課になっています。「歯磨きするよ〜」というと、歯ブラシじゃなくてタブレットを持ってくるようになりました(笑)。毎日の中ですごくいいサンリオ時間なんですよね。

取材を終えて

サンリオはキャラクターを制作するだけでなく、その世界観を様々なクリエイションの中で表現し続けています。このインタビューでそれが少しでも伝わったらいいなと思います。みなさんが目にするサンリオのグッズもきっとデザイナーが大事にし続けている世界観をまとっているはずです。

ちなみに、今回のお話の中で、これまでの仕事で、一番心に残ったデザインは「幼稚園のバス」だと話していました。理由は「大きいもののデザインが好きだから」だそうです(笑)。もしも走っているのを見かけたら、思い出してくださいね。

(おわり)

インタビュー・文:Shime , inc.
写真:平瀬夏彦

©️ 2022 SANRIO CO.,LTD.    著作:(株)サンリオ

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