ハローキティたちの願いに応えて立ち上がった騎士が活躍!「フラガリアメモリーズ」を深堀り
2023年秋に発表されたサンリオ初の本格ファンタジー「フラガリアメモリーズ」をご存知でしょうか。本作は、「ハローキティ」たちの願いに応えて立ち上がった“フラガリアの騎士”たちの物語を描くメディアミックスプロジェクトです。発表以来、大きな反響が広がり、2024年5月現在の公式X(旧Twitter)フォロワー数は実に23万人となっています。
現在はボイスドラマや楽曲が展開されており、今後も3DCGによるライブやファンミーティングなど、たくさんのメディア展開を予定。随所にこだわりと想いが込められた本作の制作秘話について、プロジェクトのプロデューサーにインタビューしました。前後編でたっぷりとお届けします!
「フラガリアメモリーズ」の世界観って?
―さっそくですが、「フラガリアメモリーズ」の世界観について聞かせてください。
村上:「ハローキティ」や「シナモロール」などのサンリオのキャラクターが主(ロード)として国を治めており、その主(ロード)に仕える「フラガリアの騎士」たちを描く本格ファンタジーです。
フラガリアは主(ロード)とそれぞれの王国、つまりフラガリアの世界を救うために立ち上がる……といった物語になっています。
―いわゆる“擬人化”と呼ばれるコンテンツとは違うんですね。
村上:はい。本作に登場する騎士たちは既存のサンリオのキャラクターとはあくまでも別の存在です。それぞれが持つエッセンスを取り入れ、一からデザインや設定を作りました。全部で18人の騎士が登場します。
―つまり、既存のサンリオのキャラクターも18キャラクターということですね。舞台となるのはどのような場所なのでしょうか。
村上:かつて「いちごの王さま」がどこからか降り立ち築き上げた世界の中にある、“純真の大陸”と呼ばれていた赤の大陸、“愛の大陸”と呼ばれていた青の大陸、“友情の大陸”と呼ばれていた黒の大陸の3つです。サンリオが大切にしている “かわいい”、“おもいやり”、“なかよく”の想いを込めました。
―3つの大陸は「ブーケ」と呼ばれているようですが、「レッドブーケ」「ブルーブーケ」「ノワールブーケ」と、テーマカラーを赤・青・黒の3色に決めた理由はありますか?
村上:最初に、それぞれのブーケで主(ロード)となるメインキャラクターとして「ハローキティ」、「シナモロール」、「バッドばつ丸」を選びました。それぞれのキャラクターをイメージした赤・青・黒はバランスも良く、設定に取り入れた形です。
―それぞれのブーケが掲げるエンブレムも可愛らしいですね!
村上:もともと「いちごの王さま」が開拓した地という設定なので、同じいちごのマークの色違いとしました。各地に6人のフラガリアがいるので、6つの輝く種を。また、背景の曲線はサンリオの昔のロゴマークをイメージしているんです。本作が、今までのサンリオの歴史の上に成り立っているという意味も込めました。
サンリオのキャラクターと騎士たち
―主(ロード)として登場するサンリオのキャラクターはどのように決められたのでしょうか。
村上:もともとサンリオのキャラクターが好きな方に、本作を見て心が躍るような気持ちになっていただきたいと考えました。そこで新旧のサンリオのキャラクターを織り交ぜつつ、性格設定や関係性など全体のバランスを見て選んでいきました。実は、フラガリアのキャラクターデザインと性格については、ほぼ同時に考えて進めていったんです。
―イラストを担当したイラストレーターさんはフラガリアごとに異なるので(※一部を除く)、大変な作業だったと思います。なぜこのようなスタイルにしたのでしょうか?
村上:それぞれの要素を活かした表現をできる方にお願いしたいと思ったのが理由です。イラストレーターさんに合わせて設定を決めたというよりは、フラガリアの設定に合う方にと。まだシナリオも出来ていない段階だったので、何度も打ち合わせしながら詰めていきました。
―ではここからは18人のフラガリアの紹介を担当デザイナー・エンさんのコメント付きでお届けします。
【レッドブーケ】(RED BOUQUET)
デビュー当時(1970年代)の「ハローキティ」のデザインに使用していた色である赤(リボン)、青(オーバーオール)、黄(お鼻)、白(体)を取り入れ、アイコニックなデザインにしました。「ハローキティ」のリボンやオーバーオールの肩紐をサスペンダーとしてデザインに盛り込みました。
「マイメロディ」は「クロミ」と共にファッションアイコンとしての人気が高いので、そちらを念頭に置いたデザインです。「クロミ」とは対のイメージで、ふわふわした可愛い雰囲気に仕上げました。
「ポムポムプリン」の自由でのんびりしたゴールデンレトリバーという魅力を活かし、デザインと性格に取り入れています。「ポムポムプリン」のようにたっぷりしたシルエット感は、現実的ではないくらいのボリューム感でとお願いしました。
「マロンクリーム」もパフスリーブでボリューミーなシルエットのお洋服をよく着ているので、それに加えてお花などの華やかな要素を加えました。「マロンクリーム」のオールドアメリカ、オールドフレンチといった雰囲気をエッセンスとして取り入れています。
デビュー当初よりも、最近のSNSなどでの少しエキセントリックな「KIRIMIちゃん.」のイメージをビジュアル化しています。また、「KIRIMIちゃん.」の右側にボリュームがあるデザインを髪型のアシンメトリーさで表現しました。
「ウサハナ」が平成初期の2000年にデビューしたキャラクターなので、当時流行っていたシール交換の色とりどりさや渋谷・原宿のイメージを反映しました。当時のことを知る人には、懐かしい空気を感じていただけるんじゃないかと思います。
【ブルーブーケ】(BLUE BOUQUET)
「シナモロール」のふわふわした感じや雲、空といったイメージを表現しています。垂れた耳っぽい飾りを付けたり、「シナモロール」のほっぺのピンク色もアクセントで使いました。それでいて、何を考えているかわからないような強いキャラクター感が出るように工夫しました。
理由は分かる人には分かると思いますが、レッドブーケの「メロルド」(ロードは「マイメロディ」)と同じイラストレーターさんにデザインをお願いしました。「メロルド」とは対象的に、「クロミ」らしい色使いと雰囲気を意識しています。
「ウィッシュミーメル」がメルシーヒルズ(ウィッシュミーメルが暮らす国)で郵便配達のお手伝いをしていることから着想したメールバッグやシーリングスタンプをイメージしたブローチのほか、イースターの卵っぽいカラー配色を取り入れています。手のひらの水玉模様はばんそうこうで表現しました。
「リトルツインスターズ」(キキ&ララ)と言えば夢や星などが象徴的なテーマなので、それを表現したくパジャマをベースに衣装を考えました。神秘的なエッセンスも感じられて、“ゆめかわいい”ならぬ“ゆめおしゃれ”な感じに落とし込めたと思います。
「リトルツインスターズ」(キキ&ララ)同様、「ルタールステラ」も「クラークステラ」との双子ですが、単なる色違いにならないように試行錯誤しました。背が高いのもポイントです。
「こぎみゅん」が“儚くて可愛い”というのがテーマと考え、絵本や童話のような雰囲気を出せたらいいなとデザインを考えていきました。「ミュンナ」は男の子ですが、どこか少女・少年性があったりしますね。
【ノワールブーケ】 (NOIR BOUQUET)
サンリオのキャラクターでは比較的珍しい、「バッドばつ丸」にあるわんぱくなイメージや、やんちゃな雰囲気を表現しました。「バッドばつ丸」が飼っているワニは“ポチ”ですが、バドバルマのワニは“タマ”という名前です。
「ポチャッコ」はぽちゃぽちゃしているので、全体的なシルエットのイメージをダボッとした服装で出していきました。あと、すごくよく動くことから、スポーティな要素としてスケボーを持たせました。
「あひるのペックル」があひるということや、宝物がバケツという“水”の要素を水鉄砲としたり、足の大きさを表現に落とし込んでいます。いつも着ている「P」マークの服と、ワッペンの「1989」がデビュー年であることもポイントです。
英国紳士や“お坊ちゃん”的な「タキシードサム」のイメージを、性格やデザインに入れ込みました。帽子も特徴的なので、イギリスと言えばホームズということでシャーロック帽と、「タキシードサム」のセーラー帽をミックスしたものにしました。
「ハンギョドン」のプロフィールを過大解釈して、妖怪っぽい妖しさや中国生まれというオリエンタルな雰囲気を取り入れました。もちろん、仲良しのタコの“さゆりちゃん”も一緒です。こちらは“リリ”と言う妖精です。
「ハンギョドン」同様、丸い目はメガネで表現しました。「けろけろけろっぴ」のお父さんはお医者さんなので白衣を着せ、冒険好きなところを大きく解釈してマッドサイエンティストの研究者という設定にしました。傘は後ろから見ると蓮の葉に見えるようなデザインになっています。
●コラム1〜SDキャラ(ミニキャラ)デザイン〜
●コラム2〜キャラクターのエンブレム〜
キャラクターに込めたこだわりや想いとは
―フラガリアたちは、主(ロード)と王国を守るための契約を結んだ妖精だそうですね。
村上:フラガリアがロードに仕えているのはみんな同じなのですが、関係性はそれぞれでかなり違います。たとえば「ピケロ」なら「けろけろけろっぴのことを知りたい」という探究心があるし、「タッサム」には「タキシードサムのようになりたい」という憧れがあったり。友だちのような関係性のロードとフラガリアもいますね。
―ちなみに、物語の中にロードであるハローキティたちが登場することは……?
村上:一国の王という存在なので姿を表すようなことはしないのですが、ストーリーに名前が出てきたり、託されたメッセージを受け取ったりといった登場の仕方はします。
いま公開されているブルーブーケのボイスドラマ1話でも「クロミ」が「クロード」に宛てた手紙をくれたり、そういった登場はこれからもする予定です。
―本作に登場していない既存のサンリオのキャラクターはこのほかにもまだまだたくさんいますが、フラガリアはこれからも増えていくのでしょうか?
村上:たぶん、このフラガリアの世界のどこかにはほかのみんなもいると思うんですよ。今後本作にどう登場するか、登場しないかはわからないのですが……。
―繰り返しになりますが、本作はサンリオのキャラクターファンにとってはフラガリアを知る楽しみがあり、本作から入った人にとってはサンリオのキャラクターを知っていく楽しさがありますね。
村上:まさにそうです。サンリオを好きな方でもよく知らないキャラクターがいるかもしれませんし、そういったところをぜひ楽しんでいただきたいです。
終わりに
プロジェクトの成り立ちや声優さんとの秘話、気になるメディア展開についてインタビューした後編は、5月24日(金)に公開予定です。お楽しみに。
(終わり)
©︎ 2024 SANRIO CO.,LTD. 著作:(株)サンリオ
取材・文:玉尾たまお
(Profile)
Webメディアライターのほか、メディアミックスコンテンツのシナリオライターとしても活動中。サンリオで一番好きなキャラはザシキブタ。