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デジタル全盛期にこそ、アナログなグリーティングカードを。

こんにちは。Sanrio Times編集担当の稲葉です。

ロフトやハンズ、郵便局などで見かけるグリーティングカード。実はその中にサンリオの商品がたくさんあることを、みなさんご存じでしょうか。

今回ご紹介するグリーティングカードは、サンリオにキャラクターたちが登場する前から続く、とても大事な事業です。

サンリオのグリーティングカード企画担当者へ、グリーティングカードに対する思いを聞きました。

Profile:安友 伸吾(やすとも・しんご)/物販事業本部 グリーティングカード企画課 シニアマネージャー。マネジメントだけでなく、グリーティングカードの企画やデザインのディレクションを手掛けるプレイヤーとしても活躍中。好きなキャラクターは「リトルツインスターズ」。

サンリオが創業来作り続ける伝統のグリーティングカード

―サンリオといえば「キャラクターの会社!」と思われる人も多いと思いますが、実は創業当時からグリーティングカードビジネスをとても大事にしているとお聞きしました。

安友 伸吾(以下、安友):サンリオの歴史においてグリーティングカードはキャラクター商品よりも歴史が古く、創業から間もない1969年から50年以上作り続けています。実は、日本のグリーティングカード市場ではトップのシェアを誇っています。(※2021-2022年度/出荷実績自社調査より)

これまでサンリオでは、創業者である辻信太郎の「心を贈り、心を伝える」という考え方からさまざまな事業が生まれてきました。その中でもグリーティングカードは思いやりを伝える、まさにそれを体現する商品です。

―キャラクターとは違った形で、サンリオの創業当時からの考え方を体現している商品なのですね。

安友:サンリオは2021年に「One World, Connecting Smiles.」というビジョンを掲げました。ここにおいてもなお、グリーティングカードはビジョンを一番わかりやすく表現できるものだと思います。

グリーティングカードは、大切な人に思いを贈って人と人とを「笑顔でつなぐ」ことができる。時代が変わっても、グリーティングカードは変わらずにサンリオの思いを体現してくれる大切な商品です。

日本で進化した「飾れるカード」というジャンル

今年のクリスマス用に、安友が企画・ディレクションしたグリーティングカード。カードの設計には、大学時代に専攻した建築の技術が活かされることもあるとか。

―もともとグリーティングカードは海外発の文化だとお聞きしました。

安友:私自身、小学校高学年から高校卒業までアメリカで暮らしていたのですが、気軽にメッセージを贈れるツールとしてグリーティングカードという選択肢が日常に定着していたように思います。

サンリオがグリーティングカードを手掛け始めた当時も、クリスマスや母の日、父の日というような海外のイベント中心のラインアップでした。今では、四季折々のご挨拶用のカード、ひな祭りやこどもの日など日本独自の行事に合わせたカードも手掛けています。

―海外から輸入したグリーティングカードが、日本で独自の進化を遂げているのですね。

安友:そのとおりです。特に「飾れるカード」というジャンルにおいては、日本ですごく進化していると思います。

ここまで手の込んだカードは、世界的に見ても日本独自のものだと思います。日本人の手先の器用さと、より良いものを生み出したいという職人気質がこれほど繊細な「飾れるカード」を可能にしています。

グリーティングカードが届いた人に「驚いてほしい」という思いがあるので、さまざまな角度でサプライズを企画するうちにバリエーションが増えました。振り返ると、やりすぎた感が強いアイテムもありますね(笑)。

 ―サプライズが込められたカードたちが気になります。

 安友:例えば、最近では一般的になっているAR(拡張現実)技術を取り入れたカードを2013年から販売していました。カードにスマホをかざすとARのアニメーションが楽しめる仕様になっています。

QRコードを専用アプリで読み込み、スマホをかざすと画面にやぐらと人が現れて、盆踊りをする様子が楽しめたそう。(残念ながら、アプリ終了に伴い現在は見ることができません)

―9年前にAR技術とは、時代を大きく先取りしていたのですね。

 安友:むしろ早すぎたのかもしれません(笑)。

ボタンを押すとカード中央に位置する液晶に、ジングルベルの音楽に合わせてアニメーションが流れる仕様。

これらのカードを作る時には小さな液晶ビジョンに流れるアニメーションの内容を考えたり、スマホアプリの開発をしたりと、私たち自身も「あれ、何の部署だっけ?」と思う瞬間もあったりしました(笑)。

安友:このように、あらゆる方向で試行錯誤をし続けています。グリーティングカードというのは、贈る人・贈られる人という1対1のコミュニケーションを思い描いて作るため、さまざまなシチュエーションに合わせた数多くの選択肢があるといいと思っています。

―高度な仕掛けが込められた数々のカードですが、郵便で送れるのでしょうか…?

安友:もちろんです!グリーティングカードの制作の唯一のルールは、「ポストに投函できること」です。遠く離れた人にも気軽にメッセージを贈れるよう、複雑に見えるカードも全てポストに投函できる仕様になっています。

クリスマスは、今年一年の感謝を伝える絶好のタイミング

―サンリオのグリーティングカードについて、もう少し詳しく教えてください。

安友:サンリオのグリーティングカードは大きく2つのジャンルに分かれていて、一つが通年通して使える「定番カード」。もう一つはシーズンに合わせて使える「シーズンカード」です。

定番カードでは「誕生日に贈るカード」、シーズンカードの中では「クリスマスに贈るカード」が圧倒的なシェアを誇っています。

―これからのシーズン、たくさんの種類のクリスマスカードに出会えそうで楽しみです。

安友:クリスマスだけでも、毎年150種類以上のカードが発売されます。クリスマスカードは、LEDの電飾が光ったり、簡単に立体にして飾れたり、ギミック的に凝ったものが多いのが特徴です。

日本の魅力が凝縮された、和風なグリーティングカード。

和風クリスマスカードもすごく人気があり、海外への贈り物や日本旅行のお土産としてなどの用途で喜んでいただけています。

―独創的なカードもたくさんありますが、どのような発想で作り出しているのですか?

安友:クリスマスに合わせたモチーフやシーンから発想して作っています。サンリオのグリーティングカード50年以上の歴史から、少しずつ技術も進化してきました。

―長い歴史の中で、新しい技術を積み重ねているのですね。

安友:毎年新たに作られる新作カードだけでなく、長く愛されるカードもあることが特徴です。

今も現役で販売され続けているカードのうち、最長のものは今年で18年目になります。決して派手なカードではないのですが、長く売れ続けています。

10年以上売れ続けるロングセラーのクリスマスカード。写真右は、18年間愛され続けているバースデーカード。

―20年近く変わらずに愛される魅力があるのですね。

安友:日本においてクリスマスは年末の大きなイベントで、宗教的意味合いを抜きにしてお祝いする人も多いですよね。これからクリスマスが、今年お世話になった誰かに思いを伝える日になればいいなと思っています。年賀状ほど当たり前ではなくても、ちょっとした感謝を伝えられるサプライズになればと。

例えば、今年のラインアップの中で私が一番好きなカードはこの3枚セットのカードです。

安友イチオシの、3枚セットのグリーティングカード。「選んで贈る水彩サンタ」(税込495円)。

3枚それぞれに、離れている人、親しい人、忙しくしている人に向けたメッセージが書かれています。すごく親しい人でなくても、こうしたメッセージを見た時にカードを贈りたくなる人が、きっといると思います。

普段カードを贈らない人でも、このカードとの出会いが感謝を伝えるきっかけになればという思いから生まれたカードです。カードを贈ることをよりライトに捉えてもらい、気軽にメッセージを贈り合う文化が生まれたらいいなと思います。

―カードから贈る相手を思い描くのは、これまでにないユニークな発想ですね。

安友:先ほどご紹介したような繊細な作りのカードや、光やメロディーの付いた派手なカードも素敵ですが、グリーティングカードの本質は気持ちを伝えることだと思います。

贈るシチュエーションやメッセージの内容こそが一番大事で、ギミックはあくまでそれを支えてくれるもの。私は複雑なカードの企画もしていますが、こういった素朴なものこそがグリーティングカードの原点だと思っています。

―サンリオにおけるグリーティングカードの原点はどのようなものだったのですか?

1970年頃のグリーティングカード。

安友:サンリオ創業期のカードを特別にお見せします。この当時はお借りした海外のアートに日本語のメッセージを添える、という作り方をしていました。

―シンプルなのにすごくモダンで、古びていないように感じます。

安友:今見るとすごくシンプルな作りのものが多いですが、これが本来のグリーティングカードです。ポストに届いたカードの封筒を発見して、気持ちが躍る。この時点でカードは既に価値を発揮しているんです。あくまで日常的に気持ちを伝えることがメインであって、凝ったギミックはそれを少しだけフォローするものです。

デジタル全盛期にサプライズを生むのは、アナログの役割

歴代のグリーティングカードを見ながら「これを作るためにサンリオに入った」と話す安友。自然と笑みがこぼれる。

―デジタルコミュニケーションの全盛時代ですが、グリーティングカードはすごくアナログなコミュニケーションツールですよね。

安友:デジタルでのコミュニケーションにはスピーディでお金もあまりかからないなど、いいところがたくさんあると思います。私ももちろんデジタルツールを活用しますが、特別な場面では特にアナログな手段を大事にしています。

―それはなぜですか?

安友:グリーティングカードや現像した写真などアナログなものが時間と共に年を重ねて、劣化する様子がすごく自然に感じて好きなんです。カードと一緒に時を過ごすことで、20年前のものは20年前のものらしくインクが変色しているのも愛おしいです。デジタルは常に綺麗なままで劣化はしないので。実体があるものは、劣化するからこそ価値があるのだと思います。

―同じだけの時を過ごしてきたと考えると、愛着がわきますね。

安友:メッセージを伝えること自体は、メールなどでもできます。ただ、デジタルでのコミュニケーションが当たり前の世の中において、サプライズを生み出すのはアナログの役割なのかもしれないと思っています。 

グリーティングカードには手に持った時の重量感や、筆跡のクセなどメッセージ以外の膨大な情報が込められています。だからこそ、ふとした瞬間に見返したり、思いを噛み締めて感動したりできるものなのだと思います。

グリーティングカードはこれからも、気持ちを伝える選択肢として大切なものであってほしいと思っています。

それぞれのサンリオ時間

―さて、Sanrio Timesではお話を伺ったみなさんにとっておきのサンリオ時間をお聞きしています。サンリオとどのような時間を楽しんでいますか? 

安友:子供たちもサンリオのキャラクターが大好きなので、家中がサンリオグッズで溢れています。当然、会社に来てもサンリオだらけです(笑)。

もう私の人生にとって切っても切り離せないほど、サンリオの中で楽しい時間を過ごしています。

取材をおえて 

グリーティングカードというアナログなコミュニケーションツールは、デジタル全盛時代の今だからこそサプライズ性を添えて贈ることのできる素敵なアイテムだと感じたインタビューでした。

今年のクリスマスは、親しい人、これからもっとなかよくしたい人、ふと思い浮かんだ人にグリーティングカードを贈ってみるのはいかがでしょうか?お互いの気持ちが伝わる、素敵なクリスマスにきっとなるはずです。

(おわり)

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