カード企画と二刀流! みんなのたあ坊担当デザイナーにインタビュー
こんにちは!Sanrio Times編集担当です。
前回の記事では「みんなのたあ坊」の約40年の歴史を振り返りました。今回は「みんなのたあ坊」担当デザイナー・島末彰子のインタビューをお届けします。
言葉と絵の中間の仕事
ー 島末さんは「グリーティングカードの企画担当者」と「デザイナー」という珍しいキャリアを持っていますね。 入社時からデザイナー志望だったのですか?
島末彰子(以下、島末):
入社時はデザイナーを志望していたわけではありませんが、グリーティングカード(以下、カード)の企画を担当する中で「みんなのたあ坊」の元になるデザインが生まれたような形です。
言葉と絵の中間の仕事につきたいと思っていて、就職活動をする際はコピーライターも考えていたんです。そんな中、サンリオのカードに出会って、まさに言葉と絵の両方に携わることができる仕事だと感じました。
ー カードの言葉とは、どのようなものですか?
島末:まさに気持ちを伝えるための言葉で、贈る相手や目的によって実にさまざまです。
目上の方に贈るものでは丁寧な言葉づかいだったり、親しい友だちに贈るものはおもしろい展開だったり。
ー あの気持ちを代弁してくれるような言葉を生み出す仕事をしていたんですね!「みんなのたあ坊」とどこか通じるものを感じます。
島末:カードの企画業務としては、言葉を考えるほかにもいろいろあります。たとえば、設計ですね。
カードはポストカードタイプのものもあれば、封筒に入れて送るもの、さらには開くと立体になるものなどいろんな形状があり、それを設計しています。
ー 立体になるカードを決められたサイズに収めるのは大変な苦労がありそうです。
島末:ポップアップのものは折りたたんだときに、きちんと封筒に入るように考え「展開図のここに、こういう絵を入れてください」などといった依頼用のデータ作成も業務のひとつです。
音が出るタイプや光るカードになると、電線をどこにめぐらせて、部品をどこに収めるか、どのような素材にするかなど検討・検証する必要もでてきます。
ー 「みんなのたあ坊」デザイナー業務との両立は大変ではないでしょうか。
島末:カード企画にはポップアップが得意な人や言葉を考えるのが上手な人など、才能豊かなメンバーが揃っていて、手分けしてやっているので大丈夫です。
以前noteに登場した安友さんをはじめとしたみんなの協力があってこそです。
みんなのたあ坊のデザイナーを兼任
ー 「みんなのたあ坊」のデザイナーとしてのお話を聞かせてください。
島末:「みんなのたあ坊」の元となる暑中ハガキを発売してから、その後27枚のカードのシリーズを出しました。とても人気があったので「キャラクターとしてカード以外の商品展開をしよう」という話が社内で上がりました。
前述のとおり私自身はカード企画の担当だったので、商品化にあたりデザイナーとして動くことになったときには、カードの上司や周りのメンバーだけでなく、他部署のプランナーやデザイナーなど全社を挙げて協力してくれました。
いざ「みんなのたあ坊」として商品化するにあたって、性格や世界観がだんだんとはっきりしてきて、サンリオのキャラクターとして完成したように思っています。
ー 「みんなのたあ坊」のキャラクター性というと?
島末:長く愛されるキャラクターには、共感性、普遍性が必要だと考えていましたので、だれもが愛しいと思う、こどもの素直さ、純粋さ、生命力、可愛らしさなどをもったキャラクターにしようと思いました。あと、おおらかでのんびりした性格からくる脱力感も大切にしました。
ー “たあ坊”のイラストには文字が一緒に描かれていることが多いですよね。
“たあ坊”たちがしゃべっているイラストなのに、どこか自分の気持ちを代弁してくれているようなメッセージに、何度も元気づけられてきました!
島末:“たあ坊”の言葉には、“たあ坊”らしさを保つための自分ルールがあります。
言葉を必ずしゃべる、こどもらしく、短くわかりやすく、なるべく漢字は使わない、口調は丁寧に、相手の目を見て話すなどです。
“たあ坊”がしゃべる姿を見て、ほっとしてほしい。
当時は「癒やし系」という言葉すらなかった時代。自分なりの「癒やし」を模索していきました。
香港でも大人気! ファンレターは276通も
ー 香港で「みんなのたあ坊」の展覧会が開催されたそうですね!
島末:昨年のサンリオキャラクター大賞の香港部門で、「みんなのたあ坊」が1位になったんです。
香港のスタッフがファンの方への感謝の気持ちをこめて展覧会を企画してくれました。
(香港の展覧会の様子)
ー 香港で「みんなのたあ坊」単独の展覧会は初めてだったのですか。
島末:香港だけでなく日本を含めても「みんなのたあ坊」単独の展覧会は初の試みでした。
「みんなのたあ坊の菜根譚」という書籍を出版したことがあるのですが「菜根譚」が中国のものということでなじみがあったようです。
ー 香港のファンから島末さんに宛てた手紙がたくさん届きましたね!
島末:ファンのみなさんが展覧会の会場でお手紙を書いてくださって。
内容を読むと “たあ坊”と人生を共にされている方もたくさんいらっしゃって感激しました。
ー 手紙の一部を拝見したのですが、日本語で書いている方が多く驚きました。
島末:私自身が若い頃、香港からファンレターをいただいても全く読めなかったものですから、ファンとコミュニケーションを取りたいという思いで中国語を勉強したんです。
同じように香港のファンの方も日本語を勉強してくださっているんですね。
中には30年以上ずっと「みんなのたあ坊」が好きという方もいました。
いただいた276通のファンレターの中から選ばれた50人の方に、お返事を書いたんです。
香港にいるスタッフが全部にきちんとした日本語訳をつけてくれましたので、いただいたメッセージにお答えするイラストも添えてお返事しました。
ー 「みんなのたあ坊」が香港で愛されている理由はわかりますか?
島末:手紙をみて思ったことは、笑顔に癒やされる人が多いんだなということです。
香港のグッズには“たあ坊”の言葉を翻訳して入れているわけではないので、日本語がわからなくても絵柄だけで好きになっていただいているファンの方もいっぱいいるんだろうなと感じています。
ー 笑顔が“たあ坊”のパーソナリティだと。
島末:デビュー当初は横顔で目を半分開けたスタイルが多かったですが、今は目を細めて笑っている顔が中心になってきて、それがよかったのかなと思います。
「見るだけで明るい気持ちになります」
「人生悲しいときも嬉しいときもいつも“たあ坊”が一緒でした」
のようなメッセージをいただきました。
笑顔には力がある、この笑顔でみんなの元気に貢献できているなと感じます。
それぞれのサンリオ時間
ー 最後にSanrio Timesでは、お話をお聞きした皆さんにとっておきのサンリオ時間をお聞きしています。
島末:毎年年末に「みんなのたあ坊」のカレンダーをお世話になってる人たちに送っています。
カレンダーは全部描きおろしのイラストを使っていて、同じものは作らないようこだわりを持って作っています。1月には干支のキャラクターが必ず登場しているんですよ。
取材をおえて
取材にあたり、約40年間で描きためた様々な資料を持ってきてくださった島末さん。インタビュー中はお母さんが我が子との思い出を話すように答えていたのが印象的でした。
サンリオのカードに添えられている文字にもぜひ注目してみてくださいね!
(おわり)
取材・文:あずさゆみ
写真:あずさゆみ
(profile)
WebメディアDtimes.jpディレクター/フリージャーナリスト
かわいいもの、おいしいものが大好き。フリーライター、フォトグラファーとしても活動中。
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